乗鞍岳(3025M) 丸黒山〜丸黒尾根〜千町尾根

 2004.08.01〜02、単独、晴れ

一度歩いてみたいと思っていた乗鞍岳・千町尾根。
日影平を起点に初の避難小屋1泊にて計画を立てた。
ところが事前の調査不足による誤算や、不慮の怪我にて初日は散々な目に。
一時は自身の甘さと未熟さを呪ったが、二日目に千町尾根に掛かってからは、補って余りある感動が…。
千町尾根から眺めた御嶽の姿は今思い出しても胸が熱くなる。



千町尾根を振り返る  素晴らしい尾根道だった

   千町ヶ原の木道                  池塘群が清々しい
<第1日目> 8/1(日) 
自宅発(4:30)〜朴の木平(7:45)〜日面(9:00)…日影平・乗鞍青年の家(11:00)
…丸黒山(14:10〜14:35) …丸黒尾根…千町が原・奥千町避難小屋(17:45)
 

<第2日目> 8/2(月)
奥千町避難小屋(6:00)…皿石原(7:45)…御嶽ビューポイント(7:50〜8:20)…剣が峰(9:30〜10:00)
…肩の小屋(10:30)…富士見岳(11:00〜11:30)…畳平(11:45)〜朴の木平(12:40)〜日面(13:50)
〜自宅着(17:30)

<第1日目>

(誤算 その1)
今回は初の無人避難小屋泊の予定であり、シュラフを持参せねばならない。
ところが私の持っているシュラフは低地でのキャンプ用の安物品。
またザックは35/45g。
登山用シュラフも大容量のザックも購入する財政的余裕が、今は無い。
そこで思案をめぐらして、スノーシュー用のサブザックに安物シュラフを突っ込んで、35/45gのザックに括りつけてゆくことにした。
ところが結果として、これは大失敗だった…。
荷物全体の重心が普段より後ろにかかり、ズッシリとした重さに終始苛まれることになる。

(誤算 その2)
一旦朴の木平に行き、路線バスの状況を確認したあと、R158の日面バス停(標高約900m)から広域林道駄吉青屋線を通って、起点とする日影平に出るつもりでいた。
ところが林道は土砂崩れで通行止め。
仕方なく車を日面に停め置いて、本来なら二日目に予定していた約10キロの登りの林道歩きを初日早々に強いられることになった。
これも事前に役場にでも道路状況を確認しておけば、容易く情報を入手でき、それに即して計画修正できたことなのに…。

(誤算 その3)
林道をとぼとぼ歩き始めて約2.5キロ地点で、山道が分岐していた。国土地理院の地図を見ると、日影平まで約4キロくらいのショートカットができる!
しめしめとばかりに山道に踏み込んだのだが、安易な選択をした私がバカだった…。しばらく行くと、酷い藪漕ぎ道に!ほとんど人など通らないのではないか?
しかし…後戻りしてこれ以上時間をロスできない。
ネット仲間のプリンスNORIこと、ノンキ君だったら目を輝かして前進している場面かな?
しかし元々常に楽することばかり考える軟弱中年の白影にはツライことこの上ない。

途中フシグロセンノウ、ツリフネソウ、ソバナ、ヤマオダマキなどがあったが、なんの慰めにもならず。
精神的に焦るばかりで花を楽しむ余裕がなかった。
気がつくと、いつの間にか愛用のステッキをどこかに置き忘れてきている。
探しに戻る気力など湧くはずもなく、ひたすら藪を漕ぎ進む。

約1.5時間、ひたすら藪を漕ぎ、やっとのことで日影平の「乗鞍青年の家」(標高約1500m)に到着。
まさに砂漠にオアシスの思いだった。
持参した水道水を捨てて、冷たい清水に詰め替える。
顔を洗って少し生き返った。
それにしても当初計画に対し、約2時間の遅れとなった。
先を急がねば。

ところが、ここからの丸黒山山頂までの登山道が予想以上にキツかった。
波状的なアップダウン、どこまで続くか思うほどウンザリとする木の階段。
シュラフを括りつけたザックが肩にズッシリのしかかる。
遅れを取り戻そうと、序盤に少しハイペース気味に歩いたのもいけなかった。
対面からは下山してくるカブ・スカウトの子供達がピョンピョン跳ねるように行過ぎる。
途中ほとんど展望はない。
一歩一歩が本当にしんどかった。
完全にバテながら、やっとの思いで山頂(標高1956m)にたどり着いた。
日面からここまで単純標高差で約1050m。
累積標高差はどれくらいになるだろう?
しばらく大の字になって20分ほどウトウトしながらのびていた。
とはいうものの、山頂の展望はなかなかのものだ。
目的地の乗鞍はもちろん、笠、槍、穂高など雄大な姿が一望できる。


 丸黒山頂                               笠、槍、穂高の峰々

丸黒山から丸黒尾根へと進む。
丸黒山からは急降下の坂道だ。
おそらく百数十mは一気に降るほどの峻険さだ。
ここを降っているときに悲劇がやってきた。
足がもつれて、しまった!と思ったときは遅かった。
ふわりと前のめりとなり、右顔面から地面に激突。
目から火花が飛んで、眼鏡の右のレンズが砕け散った。
山登りを始めて以来、最悪ともいえる酷い転倒だ。
右顔面数箇所から血が噴き出した。
慌ててタオルで押さえるが、みるみる赤く染まってゆく。
ここで考えた。戻るべきだろうか…。
しばらく休んで、出血が止まらなかったら戻る、血が乾いて出血が止まったら進む、そう決めた。
幸い血が止まったから良かったようなものの、あの転び方ではもっと酷い怪我をしても不思議ではなく、擦り傷程度で済んだのは本当に幸いだったと思う。
それからの2時間、丸黒尾根は最悪だった。
展望の無い暗い樹林の中を、アップダウンが延々と続く。
朝からの誤算続きが疲労に輪をかけ、おまけに転倒と怪我のショックも尾を引いている。
花もほとんど無い。
水場にいたっては皆無。
栄養ドリンクも飲み尽くし、水の残量も徐々に減ってきた。
明日乗鞍山頂までの行程を考えると、今日これ以上水を消費できない。
前後に人の姿は全く無い。
とても心細く、惨めな気持ちになった。
「俺ってなんてバカなんだろう。
下調べが甘かったなぁ。
こんなつらい思いするなんて。
もう山になんか当分来るもんか。」
その時は半ば本気でそう考えながら黙々と歩いた。

ぼちぼち17:00。歩き始めてから、ここまで8時間。
急に視界が開けた。
目に入ってきたのは湿原と木道。
あ〜、やっとのことで千町ヶ原に着いたんだー。
本当にホッとした瞬間だった。
地図によると、あと30〜40分で避難小屋だ。
湿原の風景に少し元気を取り戻すことができた。
今日はもう晩飯も要らない。
小屋に着いたら、そのまま倒れこんで寝てやる〜。


木道が見えたときは嬉しかった                  池塘に思わず心が和む

小屋はまだかな                            ワタスゲの大群落

ニッコウキスゲもちらほら                      どうか無事に小屋に着かせてください

17:45、やっとこさ奥千町避難小屋に到着。
ここは子ノ原高原からの登山道との合流点でもある。
ひょっとしたら今晩は一人で小屋を独占?などと想像していたのだが、なんと20名ほどの子供と数名の大人の先客あり。
聞けば子ノ原高原をベースに2週間の自然教室に来ているという。
今日皆で小屋に泊まって明日は仕上げの乗鞍登山なのだとか。
子供達が私の顔を見て遠慮なく質問を飛ばしてくる。
「おじさん、その顔どーしたの?血だらけじゃない!」
よほど出血の跡が酷いらしい。
なにせ鏡がないので自分ではわからないのだ。
子供達を怖がらせてしまったかな?
ごめんね、みんな。
リーダーの方の指導がよいのか、子供達は後から闖入してきた私を気遣ってくれ、騒がずに比較的静かに夜を過ごしてくれました。
有難う、みんな。
かろうじて空いていた土間のスペースにシュラフを広げて、晩飯も食わずに眠り込んだ…。

夜半、風が強かった。
まさか先日の木曽駒の二の舞に?
そりゃ無いぜ…。
朝4:00、子供達を起こさないように外に出てみた。
まだ星が出ている。
乗鞍の上にはオリオン…。
御嶽の上には煌々と照る満月…。
よくここまで歩いてきたよなぁ…。
ここで標高2301mか。
日面から累積で1700〜1800mくらい上がったことになるのかな。


朝の奥千町避難小屋                        乗鞍稜線からのご来光

奥千町の夜明け                           北アルプスの山々

笠ヶ岳 いつみても秀麗                       御嶽 モルゲンロート

<第2日目>

子供達は5:30に元気に出発していった。
白影も簡単に朝食を済ませ、6:00に出発。
ここから乗鞍・剣ヶ峰まで、さらに約700mほど登らねばならない。
それにしても奥千町からの四方の眺めのいいこと!
ここだけでも十分来る価値があると思う。
遠景を眺めたり、池塘や草花を愛でたりしながら、気持ちよく歩き出す。
昨日の丸黒山〜丸黒尾根とのなんたる違い。
まるで地獄と天国だ!


     乗鞍岳 夜明け前


     朝の御嶽方面  薔薇色に染まる御嶽



千町尾根はすこぶる快適だ♪
終始大景観を眺めながら歩くことができるので全く退屈しない。
登りも全然苦にならない。
我ながらゲンキンなものだ。
振り返ると雄大な千町尾根が見渡せる。(冒頭写真)

中洞権現道との合流点である皿石原を過ぎてまもなく先の断崖で、思わず目を見張り足が止まった。
なんという素晴らしい御嶽だろう!
これまで色々なところから色々な季節に色々な御嶽を見てきた。
しかし、私の中では今日ここから見る御嶽がベスト1である。
まさに真の王者の姿を見る思いがしたのである。
どう表現したらよいのだろう。
広大な裾野をひろげて泰然として聳え、けっして驕ることも誇ることも無い。
あるがままの威厳。
かといって他を威圧したり拒むのではなく、むしろ何者をも包み込み受け入れてくれるようなおおらかさと優しさ。
本当に感動に打ちのめされた。山を見てこれほど感動に震えたことはなく、胸がいっぱいになって不覚にも涙が溢れそうになった。
昨日の災難や辛さがすべて吹き飛んだ。
やっぱり山っていいなぁ…。



普段お茶目でふざけたレポを書き散らしている私だが、根は存外おセンチなロマンチストなのである。
(心底そう思うのだが、臆面も無く、こう書いてしまうところが軽薄なのかな?)
う〜ん、やはり写真では捉え切れていない。
自分の撮影技術の拙さが、こういう場合恨めしい。
時間がたつのも忘れてしばし御嶽に見惚れていた。30分くらい、しみじみとため息をつきながら眺め続け、後ろ髪を引かれる思いでその場を離れた。
そこから剣ヶ峰までは御嶽、中央アルプス、南アルプス、八ヶ岳、浅間の山々を眺め、高山植物を見やりながらゆったりと登った。
途中、ヨツバシオガマの大群落をはじめ、チングルマ、ウサギギク、コバイケイソウ、ミヤマダイコンソウなど。
畳平よりこちらのお花畑のほうが人も少なく(周囲に誰もなし)、野趣に溢れていると思った。


   ヨツバシオガマの大群落

                              千畳敷ほどじゃないけどコバイケイソウも

チングルマの群落もまだ花盛り

剣ヶ峰までもうひと頑張り                      何を想う?お地蔵さん

  浅間、八ヶ岳、南アルプス、中央アルプス、恵那山、御嶽… この日はすべてよく見えた

  手前は高天ヶ原、その左奥に乗鞍高原、ずっと奥に松本盆地

9:30、剣ヶ峰着。先に出発した子供達が出迎えてくれた。
もう何も言うことはない。
素晴らしい景観に圧倒される。


権現池                                  剣ヶ峰にて 後方は御嶽

乗鞍高原                               屏風岳 モヒカン刈りのよう?

不消ヶ池                                 富士見岳にて 後方は剣ヶ峰

            剣ヶ峰より北側の大景観 北アルプスの山々  

乗鞍の山上の峰々を巡り、畳平に出て、シャトルバスで朴の木平へ。
朴の木平では早くもコスモスが咲き始めていた。
その後、路線バスで日面まで…。
翌日は西穂へハシゴしようと思っていたが、乗鞍でかなり体力を消耗。
また、お尻の具合が悪化しかけているように思えたので、(^_^;A 無理を避けて家路に着いた。
8月上旬中に、三の沢リベンジも控えていることだし…。

今回は事前の情報収集や見通しの甘さ、さらに転倒による怪我など反省点が多い。
さらには体力の無さを痛感。
こんなことではいつまでたってもテント泊など夢のまた夢だ。
避難小屋泊にしても、やはりそれなりの容量のザックと、登山用シュラフは必要だと感じた。(実際、夜は寒かった。)
基本であるが、やはり装備はしっかりと整えたい。(金が欲しい〜!)

それにしても千町ヶ原と千町尾根は期待に違わぬ素晴らしさだった。
ただ、日影平起点は私のような軟弱者には過酷だった。
健脚度に自信の無い人や、初心者は子ノ原高原を起点としたほうがよいだろう。
そう、子ノ原高原を起点に何度でも千町尾根を訪れたい。
あの御嶽をまた見るために…。

ちなみに朴の木平で鏡を見てビックリ。
覚悟はしていたが右半面は傷だらけ。
そういえば行き交う人が皆私の顔をジロジロ見てたなー。
傷跡が残ったらどうしよう。
家庭が崩壊して、再婚を目論んだ時、これじゃ見合い写真が撮れないじゃないか。トホホ。
冗談はさておき、骨折したり、眼球を傷つけなくて、本当に不幸中の幸いだった。
皆さんもくれぐれもご用心下さい。
去年、韓国で1万円でつくった眼鏡がお釈迦、そして3千円のステッキを紛失。
あ〜ぁ、ザック代の半分にはなるよなぁ。
すべては己の不注意に起因。自業自得だから仕方なし、か…。


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