手話通訳士
資格概要 手話通訳者は、相互の意思伝達が困難な人々の間のコミュニケーションを仲介する行為を行い、実際の通訳場面では両者の意見や立場を知り得る唯一の人として 重要な役割を担っていることから、手話通訳者には、公正な態度、さまざまなことを理解する知識および高い通訳技術が求められています。手話通訳士試験が求 めている、手話通訳者の役割と通訳技術および通訳者としても身につけておくべき一般教養を評価することは、このことを裏付けているといえます。
 公職選挙法の改正により、1995年の参議院議員選挙比例代表の政見放送において「名簿届出政党等が厚生大臣(現厚生労働大臣)公認の手話通訳試験に合 格した手話通訳士を自らの手話通訳者として政見を通訳させることができるものとする」となり、手話通訳士の資格が法律の中に明文化されました。
 この参議院議員選挙比例代表の政見放送以外は、法律の中で手話通訳士の資格が明文化されているものはありません。これは、手話通訳士資格が「名称独占」資格で、「業務独占」の資格ではないことを意味しています。
 業務独占資格ではありませんが、最近では、行政機関の窓口に設置する手話通訳者を募集するときに、手話通訳士有資格を条件にしているところも増えてきて います。また、地域の手話通訳者の派遣事務所では、司法場面等通訳現場の内容により、手話通訳者の配置を手話通訳士有資格者としているところもあります。
 しかし、全国的にみると手話通訳士有資格者に限らず、ろう者と運動を共にしてきた手話通訳者や手話学習者が各地域の中で、ろう者の生活や権利の保障を支 えています。その多くは非常勤の身分であり、身分保障などよい環境とはいいがたい中で手話通訳業務を行っているのが現状です。
資格を発揮する職種 市町村行政窓口、障害者施設など
受験資格 年齢が20歳(受験日の属する年度の3月末日までに20歳以上に達する者を含む)以上の者
試験方法 手話通訳士として必要な知識・技能について、学科試験及び実技試験を行います。出題にあたっては、@学科試験は、 すべて四肢択一方式で行い、A実技試験は、音声による出題を手話で解答する方法(聞取り通訳試験)と、手話による出題を音声で解答する方法(読取り通訳試 験)で行います。
試験科目及び出題数
学科試験科目 出題数
障害者福祉の基礎知識 20問
聴覚障害者に関する基礎知識 20問
手話通訳のあり方 20問
国語 20問

実技試験科目 出題数
聞取り通訳
  〔音声による出題を手話で解答〕
2問
読取り通訳
 〔手話による出題を音声で解答〕
2問

1)試験科目別出題基準
 ア 障害者福祉の基礎知識
    手話通訳を行う者は、社会福祉全般の枠組みの中における障害者福祉
   を理解し、対人援助に関する基本的知識等が必要とされる。従って、総
   合的な社会福祉全般に関する知識及び理解度を問うため、次の各項目等
   について出題する。
  (ア)障害者福祉の理念等の動向
      リハビリテーション、ノーマライゼーションの理念等
  (イ)障害の概念と障害者の実態
      障害者の概念と範囲、障害者の実態等
  (ウ)障害者福祉の施策の現状
     ・障害者福祉の制度、実施体制、動向等
     ・障害者のリハビリテーション
       医学、社会、心理、職業等
     ・障害者の社会生活
       障害者福祉サービス、援助活動等
 イ 聴覚障害者に関する基礎知識
    手話通訳を行う者は、聴覚障害の特性と聴覚障害に起因するさまざま
   な問題を理解していないと適切な通訳ができない。また、聴覚障害者の
   社会参加を促進するために、福祉、教育、労働等の領域でなされている
   さまざまな取り組みを知っておく必要があるので、次の各項目等につい
   て出題する。
  (ア)聴覚障害の基礎知識
     ・聴覚障害とその特性
       ろう、難聴、障害の原因、聞こえの程度等
     ・聴覚障害に起因する生活上の諸問題
       コミュニケーション障害、情報障害、生活障害等
     ・聴覚障害と重複障害
       重複障害の現状等
  (イ)聴覚障害者の福祉と運動
     ・聴覚障害者福祉の現状
       聴覚障害者福祉の歴史、現状、動向等
     ・聴覚障害者運動の現状
       聴覚障害者運動の歴史、現状、動向、課題等
  (ウ)聴覚障害者の自立と社会参加
     ・聴覚障害者と教育
       学校教育、職業教育、生涯教育
     ・聴覚障害者とコミュニケーション方法
       手話、口話、筆談等
     ・聴覚障害者と社会生活
       聴覚障害者の就労等
     ・聴覚障害者と援助サービス
       補助具、社会的資源、援助活動等
 ウ 手話通訳のあり方
    通訳は、相互の意志伝達が困難な人々の間のコミュニケーションを仲
   介する行為である。そして、実際の通訳場面では両者の意見や立場を知
   り得る唯一の人として重要な役割を担う。従って通訳者は、公正な態度、
   さまざまなことを理解する知識及び高い通訳技術を求められるので、そ
   の役割と通訳の技能及び通訳者としても身に付けておくべき一般教養を
   評価するために次の各項目等について出題する。
  (ア)手話通訳者の役割
     ・聴覚障害者のニーズと手話通訳者の役割等
     ・手話通訳者の倫理と責務等
  (イ)手話通訳の理論
     ・ノンバーバル・コミュニケーション、ことばと社会等
     ・手話通訳の方法と種類、特徴等
  (ウ)手話通訳の実際
     ・手話通訳実施上の留意点等
     ・手話通訳の技法等
  (エ)手話通訳者としての一般教養
     ・時事問題等
     ・対人サービスの心得等
 エ 国語
    一般に、通訳者は、通訳すべき話の内容を正確に理解し、把握したう
   えで、的確に言い換えたり、まとめたりして、通訳しなければならない。
   このためには、まず、国語についての確実な基礎知識とともに、その理
   解力や運用能力が必要である。
    従って、総合的な国語力を問うため、次の各項目等について出題する。
  (ア)言語音
      発音のしかた、音の区別、アクセント等
  (イ)単語
      言葉の意味、類義語、同音異義語、和語、漢語、外来語、新語、
      慣用句等
  (ウ)文法
      品詞、文の構造等
  (エ)文字
      漢字、仮名遣い、表記法等
  (オ)表現法
      敬語の使い方、諸種の文章の書き方等
  (カ)文章読解
      やや長文の論理的な読解・要約等

(2)合格基準
   次の2つの条件を満たした者を学科試験の合格者とする。
 ア 全ての科目において得点があり、かつ、4科目の総得点の60%程度を
  基準として、必要に応じて問題の難易度で補正した点数以上の得点を得た
  者。
 イ アを満たした者のうち、「国語」の科目において、60%以上の得点を
  得た者。

〔実技試験〕
 オーディオレコーダー、ビデオレコーダーを使用して、問題を提示し、音声語を手話に、手話を音声語に通訳させて、手話通訳者としての知識、技能及び資質を評価する。

(1)聞取り通訳〔音声による出題を手話で解答〕
    あらかじめ、録音した音声語による試験問題を再生して提示する。
    受験者は、この音声語を聞きながら、手話で同時通訳する。
 ア 出題内容
    講演、相談、医療、文化活動等についての内容に関する2分程度の問
   題を2問出題する。
 イ 試験方法
    受験者は、仕切りによって区分された所定の位置に立ち、聞こえてく
   る音声語をビデオカメラに向かって手話で表現する。その手話をビデオ
   カメラで収録し、採点評価する。
 ウ 採点評価
    採点は、出題の内容が正確に通訳されているか否かの「正確さ」の評価
   と、手話表現の「技能」の評価を併用して行う。
    「技能」の評価は、次の各項目について行う。
    (ア)表現力 表現が分かりやすく、語句の選択が適切であり、
           動作に緩急・強弱などを加えて通訳しているか。
    (イ)円滑性 表現全体を通して流れが滑らかで、間のとり方が
           適切であるか。
    (ウ)速 さ 手話表現が音声語から時間的にずれすぎていないか。
    (エ)態 度 視線、身のこなし、伝達への意欲など通訳するときの
           態度が良好か。

(2)読取り通訳〔手話による出題を音声で解答〕
    あらかじめ、録画した手話表現による試験問題を再生して、モニタ
   ー画面に提示する。
    受験者は、その手話を見ながら、音声で同時通訳する。
 ア 出題内容
    講演、相談、医療、文化活動等についての内容に関する2分程度の問
   題を2問出題する。
 イ 試験方法
    受験者は、試験室内のイスに着席し、前方に設置されたモニター画面
   に映し出される手話をマイクに向かって音声で同時通訳する。この音声
   をテープに収録し、採点評価する。
 ウ 採点評価
    採点は、出題の内容が正確に通訳されているか否かの「正確さ」の評価
   と、音声語の「表現能力」の評価を併用して行う。
    「表現能力」の評価は、次の各項目について行う。
    (ア)表現力 手話の強弱等ニュアンスも含めて正しく音声語に反映
           させて表現しているか。
    (イ)速 さ 音声表現が手話から時間的にずれすぎていないか。
    (ウ)明瞭性 発音・発語が明瞭で、聞き取りやすいか。
試験日 (一次) 9月下旬
(二次) 11月下旬
合格率 50%程度
受験料 18,000円
過去問 問題集等 手話通訳士 過去問題・要約文
書籍
問合せ先 社会福祉法人 聴力障害者情報文化センター
医療・福祉の資格