心理的発達段階



人間の心理的発達段階は様々な理論が打ち出されている。ここでは、乳幼児期から老年期にかけて代表的な学者の理論を挙げて、考察していきたい。

ピアジェは子供の発達段階について、次の4つの段階区分を提起している。T感覚運動的段階(生後の2年間)、U前操作の段階(2〜7歳)、V具体的操作の段階(7〜11歳)、W形式的操作の段階(11歳〜)。Tの段階では、初めのうちは言葉や記号を使わないので、見たりいじったりすることをとおして活動の体系的システムが形成されていくのであるが、だんだんとそのような活動自体が子供の頭の中で行われるようになっていく。Uの段階の前半では以前に見たことのある他者の行為を自分自身でやってみるという延滞模倣ができるようになる。Vの段階になると子供の思考がまとまった体系に組織化され、具体的状況や日常的活動においてならば、論理的な思考ができるようになる。しかし言語や記号を使って問題を解決しようとすると論理的道筋からはずれ、試行錯誤的になる。Wの段階に入ると子供は徐々に具体的内容から離れても論理的操作の思考ができるようになってくる。ピアジェの段階説の特徴は、段階の区切りの年齢はおおよその目安であって、個人差があるものであるが、段階を踏んで進む順序は一定であり、またある段階に到達すれば、その段階での能力に見合った課題は基本的にはすべて解決することができるということである。しかし、この説に対してはそれぞれの段階間の移行のメカニズムが説明されていないこと、ある段階に達していない子供でも、教育によってその段階の操作の形式を獲得することが可能であることの説明がないことなどの問題点があると指摘されている。

 ボウルビィは、人間には生まれた時から生物学的な基礎をもった社会的相互作用への要求があり、それは一般に特定の人物(母親など主な養育者)に向けて焦点化されるようになるとし、発達の初期における養育者へのアタッチメントが後の人格の発達がうまくなされるかどうかということについて決定的な役割を果たすと考えた。(アタッチメント理論)。彼は養育者の側の子供に対する敏感性あるいは応答性ということがアタッチメント関係の善し悪しを決めるうえで決定的に重要なことであると主張したがこれを裏付ける研究結果はまだない。この理論に関しては養育者の敏感性・応答性によって子供が影響を受けるのと同様に、子供の個性的特徴によって養育者の態度や行動が影響を受けるということも検討されなくてはならないだろう。

エリクソンは、個人の成長発達を8つの人生周期(ライフサイクル)に区分し、特に青年期に克服、達成すべき概念は「自我同一性(アイデンティティ)の確立」であるとした。自我同一性とは、自己の存在証明である。即ち、自分が自分であるという意識、自己の単一性、連続性、不変性、独自性の感覚であり、また、一定の対象との間、あるいは一定の集団との間で是認された役割の達成、共通の価値観の共有を介して得られる連帯感、安定感に基礎付けられた自己価値及び肯定的な自己像を意味する。また、エリクソンは、自我同一性を獲得するための猶予期間を「心理・社会的モラトリアム」と名付けた。

高齢期における一つの課題は、「老い」というものをいかに受け入れていくかということにある。若々しく生きようとする努力をすることは大切であるが、若さを維持しながら長生きをすることはできない。老いに抵抗するということは、現在の自分が置かれている現実から目を背けることであり、目を背け続けることによって現実と自分のイメージとのギャップはより拡大していくことになる。高齢期における重要な概念としてQOLを挙げることができる。QOL(Quality of life)とは、「生命の質」や「生活の質」あるいは「人生の質」を表す言葉であり、身体的側面、社会的側面、心理的側面からとらえていく必要がある。QOLは、基本的に客観的QOLと主観的QOLの二つの側面から考えていく必要がある。客観的QOLとは、外部から見て客観的に評価できる部分であり、身体状況や生活環境、経済状況などが含まれる。一方、主観的QOLとは個人の主観的な感覚であり、幸福感や生きがい、満足感などが含まれる。したがって客観的QOLを向上させ、生きがいをもって幸福感を感じ、満足して生活をする主観的QOLを高めていくことが高齢期を適応的に生きるポイントとなる。生きがいや満足感にしても、幸福感と同様に個人がどう感じ取っているかという視点から考えていく必要がある。いずれにしても高齢期を適応的に生きていくためには、いかにQOLの高い生活を送るかということが重要になってくると思う。





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