日本では制度としてのケアマネジメントは高齢者支援の領域でまず導入された。そして、介護保険制度の運用システムの中に、ケアマネジメントによる援助技法が活用されたことによって関心が一挙に高まった。しかし、ケアマネジメントは高齢者支援の分野でのみ必要とされる援助技術ではない。わが国ではケアマネジメントという援助技術を必要とする状況が、まず高齢者領域で顕在化したということにすぎない。精神障害者支援の領域では勿論のこと、知的障害者、身体障害者や児童の領域においてもケアマネジメントは活用されつつある。
ではケアマネジメントとは何か。ケアマネジメントは新しい援助の技術であることもあって、その概念は未だ統一された定義は持っていないといえるが、いくつか定義を試みたものがあるので以下で紹介する。
まず、大阪府立大学大学院の白澤教授によると、初期の定義ではあるが、ケアマネジメントとは「対象者の社会生活上での複数のニーズを充足させるため適切な社会資源と結びつける手続きの総体」であると説明する。
次に「ケースマネジメント入門」を著した、D・P・マクスリーによれば「ケースマネジメント(ケアマネジメント)は、対人サービスや機会や給付の調整を促進するための利用者の立場に立つ方法である。その主要な効果は、機関の範囲を超えたサービスを統合すること、ケアの継続性を達成することである」とする。
また、大正大学の橋本教授は、「ケアマネジメントとは複合的なサービスニーズを持つ利用者が、安全で安定した自分らしい日常生活を自宅で長期的に維持できるよう、利用者一人一人のためのケア態勢をマネジメントする地域ケアの技術である」と定義づけている。
次にケアマネジメントの過程であるが、一連の流れは次のようになる。@インテーク(サービスの受理面接)→Aアセスメント(生活課題の分析)→Bプランニング(サービス計画原案の作成)→Cサービス担当者会議(サービス計画原案を元にしたチームによる計画の修正と確認)→Dモニタリング(サービス進行中における中途の評価)→Eサービス評価(サービスが利用者の生活安定に貢献したかどうか、どういう問題が残っているのかを評価する)→F再アセスメント、もしくは終結へ
ここで特筆すべきは、このプロセスにおいてCのサービス担当者会議は、ケアマネジメントの特徴の一つであるということである。この過程は、一人の担当者が行ったアセスメントと支援計画の作成を利用者とチーム(異なる機関に属する多くの関係者で構成される)の構成員全員で検討し、必要があれば修正して、全員で支援の方針と計画を一致させるものである。この際、参加するチームの構成員によって新たな情報が提供されることも少なくない。この検討の場に参加できなかった者がいる際には、何ららかの方法によって意見が問われ、全員の共通した結論が導き出されていなければならない。ただ一枚の支援計画表に関わる全員の同意を示すサインが記されていることが必要なのである。
ケアマネジメントによる支援の目的は、究極的には他のソーシャルワークの目的と変わらない。即ち、利用者が安全で安定した日常生活をより自立的にそして自分らしく維持できるように支援することである。しかし、この援助技術が、ソーシャルケースワークやソーシャルグループワークと異なるのは、支援者がチームであるということである。このチームにおいての、保険・医療・福祉の連携は援助機関の連携にとどまってはならない。重要なことはこれらの機関の提供するサービスがサービス利用者のもとに過不足なく効果的に統合されて提供されることである。即ち、機関レベルの連携ではなくクライエントレベルでのサービス統合(一体化)でなければならない。いまや連携の必要性を疑う人はいない。しかし連携ほど困難なこともない。一つの機関内でも他職種との連携は容易ではないが、これが異なる多くの機関の他職種との連携となると、極めて困難な作業となる。ケアマネジメントはこうした困難性を解決し、協力し合って活動するための合理的な援助の技術として優れた体系を持っている。
ケアマネジメントは、他職種からなる支援者チームが円満かつ効果的に協働するための職際的ともいうべき援助の技術である。ケアマネジメントによる支援を受ける利用者は、利用者の意思を中核に据えたうえでの支援者チームの合意によって、無駄や混乱のない効果的なサービスを円滑に利用できるようになるのである。