大日本帝国海軍 陸上攻撃機  G4M "Betty"

【 一 式 陸 攻 】



一式陸攻二四丁型



三菱
一式陸上攻撃機一一型

米軍呼称
"Betty"
全長×全幅 19.97m×24.88m
機体重量 7,000kg
初飛行/実戦配備 1939年10月23日/1941年5月
発動機 三菱「火星」一一型空冷複列星形14気筒 1,480馬力×2基
最大速度 444km/h(4,200m)
航続距離 2,852km(爆撃正規)
5,358km(偵察過荷)
乗員 7名
武装 九九式 20mm機関砲×1門(尾部銃座)
九二式 7.7mm機銃×4門(機首・胴体上部・左右側面)
雷爆装 1.250kg爆弾×4
2.500kg(800kg)爆弾×1
3.九一式航空魚雷×1
生産機数 各型合計 2446機
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「ワン・ショット・ライター」「一連射で火を噴く脆弱な機体」「攻撃面のみを重視して作られた双発機」。
「マレー沖で英戦艦二隻を撃沈した航空機主兵論の立役者」「双発機の限界を超えた長距離攻撃機」。

 こういった賛否両論の評価が存在する一式陸攻が生まれたのは、昭和11年―――九試陸上攻撃機が九六陸攻として正式採用されたその年に、早くも次期陸上攻撃機として帝国海軍の飛行機試作計画に表れている。一二試陸上攻撃機と名付けられたこの機体は、この時点では仕様のほとんどが未定だったものの、開発が進んでいたエリコン式20mm機銃の装備だけは決定していた。

 当時、「渡洋爆撃」として名を馳せた九六陸攻の爆撃行だったが、戦闘機よりも高性能と見られていた同機の実戦参加は、中国空軍の戦闘機によって見事なまでに打ち砕かれていた。新鋭機として大きな期待がかけられていた九六式には多くの熟練搭乗員が乗り込んでいたが、昭和12年8月の戦闘だけで、各航空隊から集成された38機の内、16機を失うという大損害を被っており、それまで「戦闘機無用論」を生み出す母体にもなった同機は、一転して「欠陥機」の烙印を押される結果となった。
 この影響を受けた一二試陸上攻撃機は、同年9月18日の航空本部技術会議で、九六陸攻の多くが経験した空中火災対策を施し、高速化された機体という、半ば応急的な性格に変貌させられている。この中で高速化に該当する案は、九六陸攻では剥き出しのまま搭載されていた爆弾を機体内に収め、戦闘時に突出させていた銃塔を廃止することで対応するというものだったが、一方で空中火災に対する対策は、発動機の馬力不足と海軍部内での防弾防火策に対する判断によって先送りされている。装備に適切な発動機が存在しないことは、兵装強化や爆弾倉といった重量のかさむ新機軸の採用に影響を与え、また将来採用されるであろう20mm機銃の大口径砲弾を完全に防ぐ手段が現状見当たらないことは、この時点で対策を施しても中途半端に終わるものという判断を助長するものであった。
 なお、発動機の選定については試作中の1,500馬力級発動機「火星」の審査合格の目処がついたことで一応の決着を見ている。

 一式陸攻はその長大な航続距離を実現するためにインテグラル・タンクと呼ばれる主翼構造を採用したことでも知られているが、翼外板が燃料タンクの上下面を兼ねるこの方式は、既存の防弾タンクとすることができない上に被弾損傷時の燃料タンクの交換が不可能で、修理そのものも非常に困難という欠点を併せ持っていた。主翼を二桁構造としてその桁間を厚板で覆った箱型の密閉構造とし、燃料タンクとするこの方式の欠点は、昭和13年6月の計画一般審査ですでに問題視されていたものの、ほかに計画要求を達成する方法がないと判断され、燃料漏洩問題研究と各タンクへの作業孔を設けるといった対策を打つことで決定されている。
 一二試陸攻の開発は順調に進み、一時期、翼端援護機の優先製作命令で陸攻型の生産が遅延するという事態にも繋がったが、昭和16年4月に「一式陸上攻撃機」として正式採用され、同年5月から高雄航空隊への配備が開始されている。


 部隊配備後の一式陸攻は、九六陸攻と共にマレー沖航空戦やABDA艦隊攻撃に参加した。マレー沖では浮沈艦と謳われた英戦艦プリンス・オブ・ウェールズ、巡洋戦艦レパルスを撃沈する大戦果を挙げたものの、ABDA艦隊への攻撃時には「馬鹿の一つ覚え」と揶揄されたほど画一的な水平爆撃で、後半になると容易に攻撃を回避されるという失態も見せている。なお、このときの戦訓は米海軍において対空戦闘時の指針として艦隊に配布され、この後の陸攻による対艦水平爆撃の効果を減衰させる要因のひとつとなっている。
 一式陸攻が「脆弱なライター」といわれる一因となったであろう戦いは、1942年2月20日、ラバウル沖で行なわれた。
 空母レキシントンを中核とする第11機動部隊に攻撃をかけた四空の陸攻17機が、直掩機によって13機を撃墜され、2機が不時着水で失われるという大損害を出した。その原因は全損害が敵戦闘機によるもので、対艦攻撃が高度300メートル前後の水平爆撃によって試みられたためにF4Fの性能が発揮されやすかったこと、陸攻に戦闘機の護衛がなかったこと、レキシントンの戦闘機部隊VF-3が戦前からのベテラン搭乗員で構成されていたことなどが挙げられる。また、発動機部分に被弾すると爆発・炎上を起こしやすいという一式の弱点が暴露されたためでもあった(その一方で、陸攻側は攻撃時に二波に分かれて進入するという防御上不利な形勢でありながら、F4F2機を撃墜、7機を被弾させるという成果を挙げている)。

 この後も一式陸攻は、珊瑚海海戦時の敵巡洋艦部隊攻撃、ガダルカナル島泊地の船団攻撃といった対艦任務に従事し、その都度大きな被害を受けている。特にガ島攻撃時の被撃墜率は高く、8月8日と11月12日の船団雷撃ではそれぞれ65、58%という損失率を出している。8月8日の戦闘では戦闘機による迎撃をほとんど受けなかったにも関わらず、攻撃に参加した26機の内14機を対空砲火で失っている(敵機による損害はこのほかに3機)。ジャワ海で戦ったときと異なり、近接対空火器を充実させた米艦艇にとって、一式のような大型機で雷撃を行なうのはかなりの危険を冒すことになっていた。

 ただその一方で、地上攻撃任務に参加した一式はこれほど高い損失を出しておらず、ガダルカナル戦で行なわれた地上攻撃で失われた機体は26機。この任務に応じた参加機数は延べ265機であるから、損失率は約9.8%にまで減少する。欧州において行なわれた英本土航空戦(バトル・オブ・ブリテン)でのドイツ爆撃機の損失が10%から20%近い値であることを考えれば、決して大きい数字ではない。これは一式の高空性能の高さによるもので、8000メートル以上の高々度から進入する陸攻に対し、上昇・高空性能に劣るF4FやP-39/400といった米戦闘機は迎撃そのものが困難であった。9月28日の戦闘では、零戦の護衛の間隙を縫った33機のF4Fが25機の一式陸攻に奇襲をかけ、全ての陸攻に命中弾を浴びせる激戦を展開したにも関わらず、被撃墜機数は5機であり、一式が簡単に火を噴くような機体ではなかったという事実を表してもいる(ちなみに、このときの米軍の主張した撃墜数は23機にのぼる)。
 高空性能に優れるスピットファイアXを相手にした1943年のオーストラリア上空戦でも、一式の延べ出撃機数108機に対して被撃墜率は4機(損失率3.7%)で、これに不時着等の要因で失われたものを含めても9機(8.3%)という数字に収まっている。
 これらの数字をどう判断するかは人によって様々だが、この時期に一式陸攻が高い損耗率を出したのは対艦攻撃時に集中しており、高々度爆撃などによる地上攻撃任務では、「ライター」という名から連想されるほど大きな被害を受けたわけでないというのは、一応の事実である。もっとも、日本軍が制空権を喪失した大戦後半になると一式の高々度性能の優位も薄れ、その損害も膨れ上がっていくことになる。


 ちなみに、一式陸攻の胴体に描かれた日の丸マークの位置にはちょうど搭乗員の乗込口があり、搭乗員たちはここをくぐるとき、誇らしげな気持ちになったという。
 各型合計で2,446機もの機数が作られた一式陸攻も戦いを続けるうちに減少し、終戦時には約160機が残るだけだった。





一式陸攻のわりとかなり有名な一枚↓

二番機ーーー!高度、高度ーーー!(志村風に)








参考:学研 太平洋戦史シリーズVol.42 「帝国海軍 一式陸攻」
"三菱 一式陸上攻撃機"
写真上:"Rod's WarBirds"





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