第三話 【赤に染まる海】
1
その名は超兵器。
ただ一隻で一個艦隊に匹敵する能力を持ち、「そいつ」が現われるときには奇妙なノイズが発生するという。
現在の技術では製造不可能な動力機関を搭載し、異常ともいえる機動性を誇る異界兵器。
あのときは大口径砲を搭載した超音速爆撃機が相手だった。今回は・・・・・・
「何とまあ、航空戦艦かい」
眼下に見えるのは広大な飛行甲板と多数の大型砲塔を備えた双胴戦闘艦だった。
藤田二飛曹は愛機、九六艦戦の操縦席からその超兵器を眺めていた。見れば見るほど奇妙な形をしている。かつて研究されていたというアメリカの航空巡洋艦を横に二つ繋げ、船体後部をすっぽり飛行甲板で覆ってしまえばこんな形になるだろうか。その甲板の端に、左右の船体に一つずつ、煙突を組み込んだ中型の艦橋が鎮座している。飛行甲板の前部には、左右それぞれに大型の砲塔がいくつも並べられており、その脇には副砲とおぼしき小型砲が押し込められている。 こいつを簡単に形容するとどうなるか。こうなる。
「前が戦艦、後ろが空母」これに尽きる。
ただ奇妙なのは、飛行甲板上に並んでいる卵形をした物体で・・・・・・これまでに見たどの航空機とも形が異なっている。夜の帳が近付きつつあるせいでよく見えないが、大型のプロペラのようなものが機首ではなく、機体上部に付いている。あれでは高速性能など望めまい。確かに揚力を得るのは容易ではあろうが・・・・・・。
藤田は傍らを飛ぶ僚機を見た。佐々木一飛曹。元は翔鶴戦闘機隊の所属だったが、ハワイ沖航空戦ののちに行なわれた編成改変に伴い、今回は共に龍驤直掩隊として海戦に参加している。内地に生還した後、揃って第零遊撃部隊所属となった龍驤に配属された結果だった。そしてこの二人を率いるのが、先頭を飛ぶ小隊長・小柳飛曹長。彼もまたハワイ沖の生き残りである。見た目はひょろ長い優男だが、これまで行なわれた模擬戦闘訓練では大陸戦線帰りの実力を遺憾なく見せ付けてくれた熟練搭乗員であった。あの大型爆撃機との戦闘で多くの航空機要員が失われた今の帝国にとっては、貴重なベテランということになる。
そのベテランが翼を揺らした。バンク。意味は「ついて来い」。すかさず急降下に入る隊長機。目標は・・・・・・あのイロモノ超兵器だ。
(威力偵察か?)
隊長機の機動は地上銃撃を行なうときのそれに酷似していた。もしかすると小隊長は、超兵器の戦闘能力を推し量るために機銃掃射をかけるつもりなのかもしれない。
一瞬、無茶な、との思いが頭をよぎった。彼らが搭乗してる戦闘機はかつてハワイ沖で操っていた新鋭機―――零戦ではない。今から6年も前に正式採用された旧式の九六艦戦だ。格闘性能こそ零戦に勝るものの、速度や航続力といった現代機に必要とされる能力は著しく劣る。火力も7.7ミリの機銃が2門だけ。零戦の搭載する20ミリ機関砲ならともかく、装甲を施された航空戦艦に通用するとは思えない。
接近するこちらの姿に敵も気付いたようだ。舷側に取り付けられた対空火器が一斉に火を噴く。従来の戦闘艦とは比較にならないほど強烈な対空砲火。しかし。
「あの爆撃機には及ばない」
大型爆撃機と対峙したときに比べればはるかに薄い弾幕射撃。小隊は巧みに砲火をくぐり抜け、超兵器に迫った。
でかい。連合艦隊の戦艦などとは比較にならない大きさだ。しかしそれでも、あの巨大爆撃機を見たときの衝撃に比べれば・・・ぬるい。小隊長が射撃を開始した。標的は・・・・・・飛行甲板に並ぶ卵形の直昇機。弾丸が爆ぜ、甲板を叩き、回転翼を撃ち抜いていく。機体を間近で見たとき、ようやく藤田はそいつが何であるか思い当たるに至った。「回転翼機か!」
続いて佐々木機の銃撃。さらに藤田機。合計6門の機銃から放たれた銃弾は、駐機中の機体を傷付けていった。が。
「効いてない!?」
回転翼を回し始めた機体を肩越しに振り返って、藤田は唇を噛んだ。意外と防弾装備が施されていたのかもしれない。銃撃を受けたはずの回転翼機が、次々と離艦する。
「暖機運転なしかよ。無茶しやがる」
列機と共に超兵器から離れつつも、藤田は敵機から目を離さない。敵機。そう、あれは敵だ。今叩き落してしまわねば、彼らは超兵器航空戦艦と相まって恐るべき脅威となるだろう。
考えは似通うものらしい。藤田ら以外の直掩隊が、翼を翻して急降下を仕掛ける。こちらも九六艦戦。ハワイ沖で大量の新鋭機を失ったせいで、今の海軍に残されているのはほとんどがこうした旧式機だった。その旧式機が、超兵器の対空砲火をかわしながら銃撃を加えていく。音速爆撃機アルケオプテリクスと違い、この超兵器はあまり防空能力が高くないようだ。とはいえ、それは比較論であり、帝国海軍の主要艦艇よりはよほど強力なものではあったが。今度の襲撃も大して成果をあげれなかったようだ。逆に対空砲火と回転翼機の反撃を喰らって一個小隊が壊滅する。
隊長機が反転した。急降下をかけたせいで高度の優位は失われているが、戦力分散の愚を犯すつもりはないらしい。集結した友軍戦闘機と共同で、一気に敵回転翼戦闘機を殲滅する。長の意思は明白だった。列機は小隊長に続いて旋回する。
闇迫る黄昏の空に、銀翼がきらめいた。
2
「龍驤直掩隊、敵艦載機と戦闘中!」
見張りの言葉も、リンの耳には届いていないようだった。あの小生意気な少年オペレーターが、驚愕に我を忘れている。所詮は少年ということか。南雲は言葉に出さずにつぶやく。想定外の敵が現れることにこれほど動揺していては、指揮官の座は務まらない。
航空参謀、源田実が進言する。
「龍驤の艦爆隊に出撃許可を。あの超兵器が本格的に動き出す前に、急降下爆撃で叩きます」
龍驤は直掩隊の他に九九式艦上爆撃機を搭載している。数こそ少ないが、うまくすれば敵の戦闘能力を削げるかもしれない。
「許可する。敵の足を止めてやれ」
「はっ!」
通信室に自ら赴く源田を見送り、未だに茫然自失の少年兵に目を向ける。
「敵はデュアルクレイターといったか。君はあの超兵器を知っているようだが、詳しく話してくれんか」
オペレーターは虚ろな目で南雲を見返した。それでも少しは回復してきたらしい。仮にも軍人らしいはっきりした口調で口を開く。
「あれは双胴形式の強襲揚陸艦です。主兵装は大口径艦砲の他に大型の奮進砲。飛行甲板に回転翼機、及び艦尾のハッチから多数の艦載艇を展開できます」
耳慣れぬ言葉がいくつかあったが、南雲は必要な情報を素早く抜き取って頭に叩き込む。回答。
「つまりは、航空機を搭載した戦艦のようなものか」
「その通りです」
簡潔明朗な返答に南雲は満足した。続ける。
「君は奴がここにいるはずがないというようなことを言っていたな。何故そんなことが分かるのだ?」
少年の目にはようやく正気が戻ってきたようだった。はっきりと南雲を見据えて応じる。
「超兵器はその特性として、奇妙なノイズを発します。これは超兵器用特殊機関の副作用のようなものでして、個体ごとにそのノイズパターンが異なるのです。これを利用して、我々は超兵器がどの海域に潜伏、ないしは活動しているのかを調査しておりました」
南雲はうなずく。目で続けるよう促す。
「今回の作戦に当たり、遊撃部隊は全超兵器の存在位置を確認した上で実行に移しました。というのは、播磨が行動不可能であるために超兵器に出てこられては勝算がかなり薄れてしまうことを危惧していたためです」
理解できる。超兵器の実力は、南雲自身がよく分かっている。
「作戦決行時、中部太平洋海域に脅威となる敵超兵器は存在しませんでした。それ故、我々はわずか3隻の戦闘艦を基幹に作戦を推し進めることができたわけです。現に、米太平洋艦隊の撃滅には半ば成功しております。」
ごもっとも。敵戦艦・水雷部隊共に連合艦隊の追撃を押し返すことができずにいる。しかし。
「そこへ敵超兵器が現れ・・・」
「君は大いに取り乱したというわけだ」
南雲の言葉に、リンは恐縮してみせるばかりだった。
「おそらく敵はノイズ探知を困難にする妨害電波のようなものを発信していたのでしょう。これまでにも何度か似たような事例は報告されていましたが・・・」
「間の悪いことに今回も引っかかってしまったと?」
リンはうなずく。自らの過ちを完全に甘受した表情だった。 「状況は理解した。次はあの超兵器をどうするか、だが・・・」
超兵器が動いたのはそのときだった。
「敵大型艦発砲! 連合艦隊第一戦隊を狙っています」
「まずい!」
リンの叫びは現実となって跳ね返った。
視界の悪さをものともせず、敵弾は連合艦隊旗艦を正確に捉えた。
「大和被弾!」
3
戦艦大和。
帝国海軍最大にして最強の戦艦。排水量は6万トンを超え、主砲には世界最大の45口径46センチ砲が選ばれている。建造に際しては厳重な警備下に置かれ、戦時中は日本国民すら知ることのなかった秘匿兵器。最高速力こそ27ノットと新時代の戦艦では遅い分類に入るが、戦闘能力にかけては比類なき存在。帝国海軍の至宝といっていいだろう。
「その至宝が燃えてるやないかい!」
愛機、九六艦戦を駆りながら、佐々木一飛曹は思わず叫んでいた。超兵器の一撃を受けた戦艦大和は、重装甲を施されていたにも関わらずあっさりと炎上させられていた。被弾は3ヶ所。艦首・中央部・艦尾に一発ずつだ。よくもまあまんべんなく当てたものだと感心するものの・・・。
「見物の邪魔すんなや!」
襲い掛かってくる敵回転翼機のせいでのんびり鑑賞している暇はない。敵機は速力こそこちらに一歩譲るものの、火力・格闘性能においてははるかに抜きん出ていた。特に機首に集中装備されているらしい大口径機関砲は、すでに別の小隊を丸ごと薙ぎ払う力を見せつけている。油断は即座に蜂の巣を意味していた。しかも・・・回転翼機の機動は、これまで戦ったどの航空機とも異なっていた。従来の戦闘機には不可能な垂直上昇、降下を駆使してこちらの攻撃をはぐらかす。敵の技量は相当なものといっていい。
愛機を操り、敵機の背後につける。望遠照準義を覗き、射撃。狙い違わず銃弾が敵の機体に吸い込まれる。射撃継続。速力に関してはこちらの方が優位にある。不意を突かれない限り、そうそう遅れをとるものではないが・・・・・・。
「くそっ、ちいとも効かん!」
回転翼機の装甲は尋常なものではなかった。九六艦戦の7.7ミリでは撃ち抜くことができない。さすがに尾翼や回転翼までは装甲化されていないが・・・手強い。一定以上の技量と優秀な機体が組み合わさったときの敵は、恐るべき相手となる。
火箭が増えた。敵を振り切った僚機―――藤田二飛曹と小柳飛曹長が加わったのか。無数の機銃弾を撃ち込まれてなお、回転翼機は墜ちなかった。「化けもんかコイツ・・・!」
不意に敵機の姿がかき消えた。瞬時に操縦桿を倒し、フット・バーを蹴る! 7.7ミリとは比較にならないほど巨大な火箭が傍らを抜けていく。垂直上昇で追撃をかわした敵の銃撃。それをからくも凌いだ。・・・そう。これも脅威のひとつだ。あの機動力と、そして正確無比な射撃。こいつも異界兵器か!
小柳機が支援に回る。銃撃。航空機全般に共通する弱点―――腹下に銃弾を受けながら、しかし敵は飛行を続けている。スロットルを調節、速度を絞り、小さな弧を描いて旋回。隊長機の追撃に逃げ惑う敵機に襲撃をかけられる位置に付く。
空戦において、見張りの欠如は死に直結する。あらゆる角度を瞬時に見回し、脅威となる敵がいないことを確認。射撃体勢に移る。射撃の機会はわずかに数秒。この一瞬の内に照準を付け、発射把柄を引く。轟音。機首に装備された2挺の機銃が火を噴く。弾丸は回転翼を撃ち抜いた。見かけによらず厚い防弾装甲を持つこの回転翼機を墜とすには、機体よりも尾翼や回転翼を狙うべきだった。
目論見は的中した。安定を崩された敵機は機体を傾けて落下する。それは空母着艦を揶揄した言葉―――制御された墜落などではない。文字通りの落下だ。重力に抗う術を失った機は海面に叩きつけられ、四散する。撃墜。
ようやく手にした勝利に、佐々木は口を歪めた。敵は確かに手強い相手だが、無敵の存在ではない。適切な手法を以って戦えば、この旧式機でも墜とすことができる。異界兵器だからといって恐れる必要はない。戦闘における最大の敵は、己の内にある恐怖だ。
銀翼が翻る。列機が肩を並べる。戦果を誇るように、佐々木は白い歯を見せた。
小隊長がうなずいて、そして正面を指差した。そちらを見やった佐々木は・・・先ほどの戦果が例外に近いものであったことを知る。そこで展開されていた光景は、自軍に倍する敵に包囲され、次々と火球に変わっていく友軍機の姿だった。
唇を噛み締める。そうだった。敵も精鋭なのだ。
翼を揺らし、友軍機の救援に急ぐ長機のあとを追う。
眼下で、異形の航空戦艦が咆哮した。
4
「二番砲塔全壊。使用不能!」
「機関室、浸水止まりません」
「後部射撃指揮所応答なし。伝令を派遣します!」
大和の被害はとどまることを知らなかった。世界最強を目指して建造されたはずの巨艦が、今、誕生から半年とたたずにその命の灯火が尽きようとしている。前部に備えられた2基の主砲塔は敵弾によって破壊され、艦尾の三番砲塔は射角の関係から発砲できずにいる。機関室の大半が浸水、ないしは放棄を余儀なくされ、出し得る速力は10ノットを下回った。損害はこれだけではない。
重要装甲区画―――ヴァイタル・パートを突破した敵弾の一部が電路を切断。艦の至る所で停電が発生し、応急用の注排水装置も作動せず、僚艦とも満足に連絡が取れなくなった。大和はその戦闘力を完全に喪失し・・・・・・今や浮かべる鉄塊と化していた。ただひとつ幸いであったのは、指揮権を長門に移譲できたことであろうか。司令部との通信が途絶したままの戦闘は、現代戦においては悪夢そのものといえる。長門も無傷とはいえず、火力・速力・装甲のいずれも大和に遠く及ばないが、それでも帝国海軍第二の実力を持つ戦闘艦だ。連合艦隊の旗艦を務めたこともある。近藤司令に代わって、うまく指揮を執ってくれることだろう。・・・もっとも、果たしてわずか4隻の戦艦であの超兵器に勝てるかどうかは保証の限りではないが。
「敵超兵器に魚雷命中。水柱2本を確認!」
生き残った見張りが、戦況の変化を伝えてくる。損害対策に追われながら、宮里は敵の方角に目を向ける。
双胴の大型戦艦の舷側に、巨大な滝が出現している。帝国海軍の九三式酸素魚雷でも、ここまで威力を発揮することはできないであろう。魚雷を放ったのは―――
「第零遊撃部隊第一戦隊ですね。例の超高速魚雷です。あなた方の水雷戦隊と同様に、予備魚雷を搭載していました。二度目の雷撃・・・おそらくこれが最後の打撃になるでしょう」
そういったオペレーター・シュウの顔が曇る。
「しかし、2本命中したぐらいで奴に通用するかどうか・・・・・・」
シュウの言葉は現実となった。大型戦艦すら撃沈し得る破壊力を叩きつけられた超兵器は、しかし悠然と航行を続けている。発砲。優に10を超える閃光が走った。全門斉射。従来の艦砲を上回る速度で撃ち出された砲弾は、長門を包み込む。
宮里は歯噛みした。この大事なときに満足に動くこともかなわないとは・・・。世界最強の戦艦が聞いて呆れる。くそ。射撃さえできれば連中を援護できるものを。
艦首に備えられた砲塔は原型を留めぬまでに破壊され、二度と火を噴くことはない。敵の目を逸らそうにも、射撃のできない大和は脅威にも映らない。現に、先ほどまでこちらを向いていた敵の砲門は、決死の突撃をかける長門以下の第一戦隊に向けられている。・・・戦艦大和。米艦隊を劣勢下で叩き潰すべくつくられたはずの無敵の存在。空母機動部隊を失った帝国海軍の希望。その一身に浴びせられた賞賛が、今は虚しい。
隣で、指揮権を失った長官が動いた。
「艦長、第一戦隊をどうにか援護できないものかな。あのままでは敵に有効打を与える前にやられてしまう」
近藤の目は前方を見据えていた。そこは数多の砲弾が飛び交い、灼熱地獄さながらに海が沸騰している。
「この際、敵の砲撃目標をこちらに変えさせるだけで構わん。第一戦隊が決戦距離に入るまでの時間稼ぎになればそれでいい」
「しかし本艦はすでに火力の大半を奪われております。それに応急修理を優先させませんと、沈没の恐れすらあります」
「どの道ここで負ければ足を失った大和は敵の的になるしかないのだ。それならば、ここで死に花を咲かせたい。それで第一戦隊が突入に成功すれば、大和も無駄死ににはなるまい」
一瞬、宮里は返す言葉を失った。大和は助からない。その言葉が、ひどく胸にのしかかる。
しかし宮里は軍人だった。情を抑え、恐れを殺し、事態を好転させるべく素早く思考を巡らせる。
「復旧した予備電力全てを三番砲塔に伝達し、各個照準で射撃します。命中は望めませんが、大和が『生きている』ことを知らしめるぐらいはできるかもしれません。ただしその場合、大和は確実に失われます」
近藤がうなずく。
「構わん。やってくれ。」
「・・・了解」
うなずいた宮里は、三番砲塔に最後の射撃の機会を与えるべく必要な指示を下していく。応急修理に当てていた予備電力が絶たれ、復活していた排水ポンプの作動が止まる。浸水は容赦無く隔壁を突破し、勢力を広げていく。濁流が火災とぶつかって、水蒸気が立ち上る。傾斜が増大する。報告。
「第零遊撃部隊第二戦隊、突撃開始。長門以下、第一戦隊に続きます!」
見れば、第一戦隊の背後から敵超兵器に向かって疾走する水雷戦隊がいた。南雲忠一率いる第二戦隊。海軍が遊撃部隊の見張り役として遣わした牽制部隊。戦力は軽巡1隻と旧式駆逐艦が数隻。水雷戦を専門に学びながら不得手の空母機動部隊を任され、そしてハワイ沖で全てを奪われた指揮官の、それは意地であったのかもしれない。
超兵器の砲弾が長門を捉えた。主砲塔の天蓋がぶち抜かれ、弾丸は火薬庫に到達、信管を作動させる。
黄昏の戦場に花が咲いた。幾千の命を道連れに散る紅蓮の劫火。戦艦長門は消滅した。
大和の猛りは届かなかった。
勝ち誇る超兵器の上空を、異形の回転翼機がフライパス。
黒煙は残照を閉ざし、夜の世界が拡大する。
闇の世界だった。
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