そこに居た(滋賀県大津市)
これは以前、著者が勤めていた会社の先輩Mさんに聞いた話である。この話は深夜、仕事で岡山に行く時
高速道路で眠気を払うために二人で話していたうちの一つである。
その頃、Mさんは非常に霊感の強い女性と付き合っていた。普通に歩いているだけでも、そこに居るとか、
ここは気持ち悪いとか話したそうである。しかしMさんは全然信用していなかったのだが、ある日、
それを信用せざるを得ない現実を目の当たりにしてしまうのである。
ある日の夕方、自転車の後ろに彼女を乗せて走っていた。とある道に廃屋を潰したばかりの空き地があり、
その家にあっただろう長い木製の塀だけが残されていた。すると突然彼女が「この道はイヤ、遠回りでも違う道にして・・・」と
言い出したのだ。普段、どれだけ気持ちが悪くてもそんなことは言わなかったらしいのだが。
「そんなこと言うなや・・・。」と冗談交じりで言ったMさんだが、あまりの彼女の真剣な顔に仕方なく他の道に選んだ。
しばらくの間、その道を通ることもなく数ヶ月が過ぎた頃、Mさんはその彼女とも別れてしまったのだが、偶然にも
その道を通ることがあった。それは雨がシトシトと降る、湿度の高い嫌な日の夕方だったと言う。
その例の空き地は瓦礫などは撤去されたのに、塀だけは何故か残されていた。その塀に不思議な感覚を覚え
目をその塀の道に近づいた場所を見た時、ギョッとした。塀の足元の辺りに雨で妙なシミが出来ていたのだが、
その形にMさんは驚いたのである。それは人間が膝を抱えて座っている形を浮き上がらしていたのだった。
Mさんは確信したそうである。「あいつが見たのは、確かにそこに居た・・・。」
|
|