無数の泥の手形(奈良県吉野)
これは私の先輩Mさんから聞いた話で、もちろんMさんも見た話である。
Mさんの友人達が3人で奈良の吉野のほうへ遊びに行った時の話である。(Mさんは行っていない)
夜景がきれいな展望台があると言うことで辺りが暗くなった頃、あるトンネルの脇に車を停め階段を
上って展望台へ向った。そこはトンネルの少し上にあり、階段をぐるっとカーブした感じで
登っていくのだが、一時的に駐車している車が山の陰に隠れて見えなくなるらしく、階段を登って
しばらく夜景を見ていた時一人が異変に気付いた。「おいッ、車の周りに誰かおるぞ!」全員が見ると、
ハッキリとは見えないが確かに数人の人間が車を囲んでいるように立っている様に見えた。
「何か変やな・・・車も気になるし戻ろか・・・」急いで階段を降り車に戻ろうとしたのだが一時的に
車は山の陰になる為、数人の人は一時的に見えなくなった。
息を切らし車に戻ると、辺りに誰もいなく車にも何もされていなかった。「気味が悪いな・・・
もう、行こか・・・」と全員が車に乗ったその時である!車の周りに沢山の人々が浮かび上がった。
顔色も悪くまるで死人のようだったと言う。さらにその人たちは無言のまま、車に向ってドンドンと
叩き始めたのだった。「何すんねん!あかん!何かおかしい!はよ行こ!」一人が叫ぶとあっけに
取られていた運転手が慌ててエンジンをふかし、その場から立ち去った。
その頃、家でくつろいでいたMさんの家の電話に友人から電話があった。それは奈良に出掛けていた
友人からであり、どうしても車で迎えにきて欲しいと言うものだった。夜も遅く、断ろうと思ったMさん
だが友人達があまりにも悲痛な声で話すので少し気にかかり、とりあえず急いで吉野のほうへ車を
出した。
吉野付近のパーキングエリアに着くと友人達はかたまって駐車場の隅にいた。「どないしたん?」
Mさんが聞いても口ごもるばかりで、何があったかはその時は話してくれなかったと言う。パーキング
エリアを出ようとした時、Mさんが「そう言えば、あんたらの車はドコなん?」と聞くと一人が力なく
一台の車を指差した。「何あれ?ドロドロやん!」それがMさんの第一印象だったという。確かにそれは
泥をかぶったようにひどく汚れていたと言う。車を降り、近づいてよく見たMさんは息を呑んだ!
その無数に付いた泥の一つ一つは人間の手形であった!ドア、ボンネット、車体の全てに付いていて、
酷いところではへこんでいるところもあったそうだ。「確かに気持ち悪かった・・・」と今でもMさんは
そう言う。
送って行く車の中では友人は一言も話さなかったらしい。そして数日経ってからこの体験談を
話してくれたと言う。
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